「戦略」
ビジネスでも、スポーツやゲームでも良く使われる言葉です。ただ一方で、「戦略とは何か?」と問われると、ちょっと言葉に詰まってしまう方が多いのではないでしょうか。
自分自身、事業企画などの仕事をしている中で戦略という言葉をよく使いますが、その定義がぼんやりしていることに気づきました。そこで手に取ったのがこちらの本です。
なぜ「戦略」で差がつくのか。―戦略思考でマーケティングは強くなる―
一言で言うとどんな本?
戦略とはそもそも何か?という原点から、戦略策定から実行までの具体的な思考方法、チェックポイントを紹介している本。
おすすめしたい人
新たに製品やサービスのマーケティング、事業企画を担当することになった人。そのような仕事をしていながら、どこか自己流の曖昧な解釈で仕事をしている実感のある人。
おすすめしない人
戦略の原理原則を説明した本なのでおすすめしない人はあまりいませんが、一定のビジネス経験がある人の方が抽象的な話と自分の実体験を重ねて読める分、理解は深まると思います。
なぜ読んだのか?
新規事業の戦略を策定するときに、そもそも戦略ってなんだっけと不安になったので。
実際に読んでみて、「戦略」というなんとなく響きはかっこいいけれど定義がぼんやりしていたものがはっきりと理解できた印象です。「戦略とは目的達成のための資源分配の指針」です。
目次はこのようになっています。
第1章 戦略を定義付ける
第2章 戦略の構成要素1「目的」を解釈する
第3章 戦略の構成要素2「資源」を解釈する
第4章 戦略の効用
第5章 戦略を組み立てる
第6章 戦略を管理する
第7章 戦略的に考える
第8章 「戦略」をより深く理解する
個人的なメモ
最後に、本の内容を思い出すための個人的なメモです。内容をざっくり理解されたい方はご一読ください。
第1章 戦略を定義付ける
01 戦略を定義するための出発点
戦略は、計画・目的・ビジョンや理念・方針といった概念なのか?
計画は、一定の方針を拠り所にして策定されるものであるが、戦略はその方針を包含するものである。
目的と戦略にも大きな違いがある。戦略は目的をどうやって達成するかを示すもの。
ビジョンや理念は基本的には説明不要の究極の善である。また、ビジョンや理念の存在が目的達成のための方針を指し示すことはない。その意味で、戦略とは異なるものである。
戦略が方針だと言う考え方は、戦略の機能をうまく捉えている。本書では、戦略とは目的を達成していくための何かしらの方針・指針であると考える。
逆に、戦略が必要ない状況とは何かを想像すると良い。達成すべき目的もしくは、資源の有限性がない状況では戦略は必要ない。
ということは戦略があることで、目的達成のための資源の最適な分配の指針が定められるということ。これが戦略そのもの。
02 戦略があるとなにがいいのか
戦略を持つことの4つの利点
1, 効率的に資源を運用することで、効果的に目的を達成することができる
2, 経験値を獲得できる
3, 迅速な意思決定に役立つ
4, 計画に一貫性と安定性が出る
第2章 戦略の構成要素1「目的」を解釈する
01 目的にはいいものとそうでないものがある
戦略を組み立て、戦略的に考えるにあたっては、目的を明らかにする必要がある。戦略的な失敗の大部分は目的の不明確さが占めている。
02 いい目的を設定する強い味方――SMACとSMART
ユニリーバで使われるSMART
Specific:具体的>数値化する
Measurable:測定可能>測定方法・単位を明らかにする
Achievable:達成可能>実現可能性を測る
Relevant:関連性がある>会社の理念やビジョン、現状との一貫性を持たせる
Time-nound:期限設定>締め切りを明らかにする
03 「目的」を別の角度から眺めて、再解釈する
「解決すべき問題がうまく定義づけられた時点で、問題の半分は解けたようなものだ」(1876年生まれのアメリカの発明家 チャールズ・ケタリング)
目的の解釈の仕方次第でその達成方法が大きく異なる。戦略策定において、この点が創造性を発揮するポイント。
04 「目的」を再解釈する具体的な手法
・何が問題か?
・ある場合とない場合
・5年後に視点を置く
・理念やビジョンとの関係性を考える
第3章 戦略の構成要素2「資源」を解釈する
01 「資源」を解釈し直す
戦略策定において、目的の解釈とは別にもう1点だけ創造性を発揮するのが資源の解釈。
そもそも資源とは、目的達成のために活用できる有形無形の資材、資産や人材。大事なのは、一見資源らしく見えないものがあること。
02 資源を考える 1内部資源
・人材
①個体間の均質性が低い
②配置によって効用が大きく変化する
③状況や働きかけ次第で成長して費用上昇を効用が上回る可能性、士気や調子で効用が下がる可能性がある
④効用についての指標が乏しく、客観的な評価が簡単ではない
⑤他の資源の効用に対して係数的な影響を及ぼす
Ex)優秀な人材とそうでない人材が運用する1億円の効用
・製品技術、製品やサービス
・資金や予算
・営業力製造技術や流通技術
・ブランド
・人脈
・経験や知識
・過去のプラン
03 資源を考える 2外部資源
・代理店
・メディア、取引先、提携先
04 資源を考える 3認識しにくい内部資源――内部資源になりそうなもの
・製品の差別化
・スキル、技術、能力、コアコンピタンス
05 資源を考える 4認識しにくい外部資源――外部資源になりそうなもの
・政府、業界団体、オピニオンリーダー
・ユーザー(ブランドのファン)
・競合の活動
ー競合の次の一手が読める場合、その一手を利用することができる。競合と逆張りする、競合の提供価値の先を行くなど。
06 複数の資源を効率的に運用する
資源係数を上げるための補完と相乗。
資源を整理して把握するための6項目。
①資源となりそうなものをできるだけもれなく書き出す
②他の資源と比較した時の相対的な特徴を考える
③その特徴が強みとして発揮される状況
④その特徴が弱みになってしまう状況
⑤それぞれの資源が「目的」に対してどのような紅葉を発揮できそうか
⑥各資源の相互作用を考える
第4章 戦略の効用
01 戦略を持つことでなにが変わるのか
①成功確率が上がる
②目的のより良い達成が可能になる
③いい失敗で経験値を獲得しやすくなる
④再現性の確保
⑤有意識の力
ー目的や資源を明文化することで新しい発見につながる
⑥パニックを防ぐーー貫性を担保する
⑦自損事故を防ぐ
⑧意思決定を助ける
⑨目的を共有する
⑩摩擦を下げる
02 戦略があれば不測の事態に対処できる
対処①そもそも本当に重大な自体なのかの確認
不測の事態が、あらかじめ規定されていた目的や、再解釈された資源に影響を与えるのか。不測の事態そのものの大きさだけで動揺すべきではない。
対処②代替策、緊急策の事前準備
対処③資源の予備
03 戦略と再現性に固執する
達成すべき目的と、投入可能な資源に大きな変化がない限りは戦略は変えられるべきでない。時間が最も有限な資源であることから、朝令暮改で時間を浪費することを避ける。
第5章 戦略を組み立てる
01 戦略を組み立てるための思考法
目的や資源の再解釈には発散、戦略の組み立てには収束的な思考を用いる。
02 戦略の階層――上位の手段が下位の目的になる
03 「選択と集中」がなぜ必要になるのか
資源の数的有利。効果には閾値があることから。
04 「選択と集中」を説明する概念
05 「選択と集中」を妨げる概念
06 複数の視点を獲得する
07 戦略を文章化する
①全員が同一の解釈をできるものにする
②士気を高めるもの
③都合のいい話にしない
第6章 戦略を管理する
01 戦略をいかに実行に移すか
戦略への納得感が大きな成果につながる。
02 戦略を変更すべきとき
目的と資源に変化があった時。
第7章 戦略的に考える
01 最悪の事態を回避するための思考トレーニング
時間軸を先に進めて、計画が失敗に終わったことを想定する。その理由について過去形で話す。
02 不確実性を読む
第8章 「戦略」をより深く理解する
01 実践的な思考の道具としての戦略
02 従来の戦略論とどう関連するか
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